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    “ R E A L ”

    − 保育園編 − vol.2 森本宮仁子

     

    ―「保育園落ちた日本死ね」というブログ(http://anond.hatelabo.jp/20160215171759 )が国会で取り上げられたことを発端に待機児童や保育士の待遇についての問題が浮かびあがりました。

     

     ブログについて、私たち保育士も当事者にあたるわけなので、書かれた方のお気持ちはよくわかりました。今回はブログをきっかけに与野党が動き始めましたが、私たち保育士もずっと待遇改善を求めてきたんです。ただ、私たちの声は「業界のエゴ」だと一蹴されてきた。ここまで爆発的にイシューが燃え上がらないと声がまともに聞いてもらえないことに、日本社会の恐ろしさを痛感したというのが正直な感想です。

     厚労省が発表した去年10月時点の待機児童数は、東京都で7600人、千葉で1000人、大阪府で599人、うち大阪市は217人。大きな数字に見えますが、一部の地域に集中しているんです。保育所に入れる地域まで引っ越す方もいらっしゃいます。

     

    ―保育士の待遇については、どんな実態があるのでしょうか。

     

     公立保育所では、地方公務員の給料が出ます。
     でも、私立の保育所だと子どもの数や年齢、園の利用定員の規模などそれぞれに単価が決まっていて、それらを合算したものを事務費や人件費に割り当てることになります。園によっては夏休みの間に保護者にできるだけ休みをとってもらったり、研修会を抜けるなどして有給を使ってもらっている。そこまでしなければ給与を保証できないんです。うちの保育所だと、初任給が15万8千700円。相当安いですが、これでも人件費は85%なんです。手取りだと13万とか14万。これでは1人暮らしも難しいですよね。

     

    ―待遇と保育のあり方はどんな関係にありますか?

     

     2015年度から、国の政策で保育短時間・標準時間という新制度が始まりました。保護者の就労時間によって、家庭ごとに保障される保育時間が、行政に認定されるんです。保育標準時間は11時間、保育短時間が8時間です。

    そうすると、働いている方のほとんどに、保育標準時間が割り当てられます。ただ実際は通勤時間の長短があったり、保育園から自宅までの距離に個人差もあり、人によっては9時間半の保育時間で足りたりするわけです。ただ、料金としては11時間分払っているので、そこは利用者の心理として11時間分保育してもらいたいと考えるのは当然ですよね。
     今までうちの保育士は、8時間拘束のうち7時間15分労働、45分休憩だったんですが、新制度によって早朝や夕方以降の利用者が増加したことで超勤が増え始めた。だから保育士に頭を下げて、9時間拘束の8時間労働、1時間休憩に変えてもらったんです。これは結構ハードな労働なんですよ。保育士はやりがいや気概でもっているようなものですが、それだけではキツイ仕事です。
     加えてうちの保育所は休日保育や夜の延長保育などを行っている。本当は、特別なことをやってられる状況じゃないんですが、働く方にとってはどちらも必要なサポートだと思います。


    ―そもそも、なぜ保育士の待遇は悪いのでしょうか。

     

     現在、給付金などの制度は保育士の賃金(本俸基準額)を月19万9920円(2015年度)と見積もって組み立てられてます。だから、賃金が19万程度の人を多く雇っている保育所は資金出差額が黒字になるんですが、それはつまり職員が若い人ばかりということ。保育の環境としては良くありませんよね。そして、そういった若い職員の多い保育所というのは働き手が集まらないので、初任給が高かったりするんですが、職場の環境もあるのか就職してもすぐに辞めてしまうことも多いようです。
     そもそも、保育や介護の仕事というのは、本来女性が自宅で無償で担ってきた「ケア労働」と見なされていることも待遇の悪さに関わっているのではないかと感じています。そういった意識が、無資格者でも保育が出来るといった、安易な発想に繋がっているのではないかと。保育の環境や、子どもとの関わり方を考える専門性の高いことをやっているので、近所の誰かに預けたり、あるいは親子間の子育てとはわけが違うんです。「無資格でも良い」「子育て経験があれば良い」という考え方は、保育にも子どもにも失礼な考え方だと思います。

     

    ―「業界のエゴ」と言われた待遇改善要求についても、保育の重要性にたいする軽視が根底にあるのではないかと思います。

     

     保育というのは、単に「今日1日怪我せずに遊べれば良い」というものではありません。どんな人になってほしいのか、どんな経験をすることが育ちになるのか考え、人として尊厳をもって誰かと関係を作ることを学んでもらうことが保育の仕事です。それは社会を構成する重要な基盤になるのではないかと考えています。

     

    ―現在の日本社会において保育所はどのような役割を果たしていくことが可能だと考えますか?

     

     経済の低迷に伴って共働きの世帯は子育て世帯の労働時間はどんどん増えていますよね。そして、昔に比べると子育てに対する地域社会のサポートは減ってしまった。子育ては、より親子間に限定されたものとなり、精神的にもハードになりました。子どもの命を守るのは親だけだという責任感が生じ、子育て自体がハードになっています。少子化と言われますが、子育ての環境がこれでは無理もないと思います。
     消えつつある地域社会が提供してきた子育ての環境は、保育所が保障する必要があると思っています。「地域社会」がなくなりつつあるのならば、保育所が「地域社会」の代わりを担えると思います。虐待などから子どもを救うためにも、ぜひ保育所を活用してほしいと思っています。

     

    ―政治に何を求めますか。

     

     理想は、余裕をもって子どもたちを保育できるだけの費用を国が負担することです。たとえ定員割れしている状態の保育所でも、国が一定の補助金をだして、常に子どもを受け入れる環境が保障されるべきです。

     

    ―今日はありがとうございました。